在宅医療の"ウルトラC"— 私を見かけたら、堆肥とノンアルレモン酎ハイを想像してほしい件について —
- 米子の在宅医療・緩和ケア よだか診療所
- 2022年5月4日
- 読了時間: 3分
更新日:3月8日
桜が過ぎ、新緑が燃える季節に。
2022年も、あっという間に4月が過ぎました。街は新緑に覆われ、季節は確実に前へ進んでいます。
梅雨だ、盆だとぼーっとしている暇はありません。
なぜなら——診療報酬が改定されたからです。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の指針が義務化。
今回の診療報酬改定により、在支診(在宅療養支援診療所)の施設基準届出要件に、
・ 「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の院内指針を設けること」
という項目が追加されました。
当院でも、文書化や各種資料の整備が進んでいます。いずれ皆さんにもご覧いただける機会を作りたいと思っています。
これは「算定要件のハードル」ではなく、厚労省からのラブレター。
今回の改定を、単なる「施設基準を満たすための枠組み」と考えるのではなく、
・ 「患者さん、ご家族、地域のスタッフのために、自分たちなりに深め、日常化していく」
ことを目的とした指針にしました。
なぜなら——「ACPは難しいけど、ちゃんとやらなければならない」と、日々実感していたからです。
ACPは「堆肥」みたいなもの。
堆肥を作るには、時間がかかる。
森の中で、落ち葉や生き物の亡骸が積もり、それを微生物がゆっくりと分解し、豊かな土壌を作る。これは、一朝一夕でできるものではない。
ACPも同じです。患者さんや家族の考えは、時間をかけて熟成されていくもの。いきなり「決めてください」と言われても、簡単に答えが出るわけではない。
だから、ACPは「焦って決めるものではない」と言いたいのです。じっくりと関係を築きながら、少しずつ、少しずつ熟成させていくもの。
時間をかけ、適切なサポートがあれば、やがてその人にとって最適な意思決定が生まれる。これが、ACPという「堆肥作り」のプロセスなのです。
「ウルトラC」に立ち向かうために、在宅医は存在する。
✅ 患者さん本人のために活動する。
✅ しかし、それがご家族を傷つけるものであってはならない。
✅ だが、患者本人をないがしろにする医療も、これからは許されない。
そして、私たち自身の欲張りな願い——「しんどいことは嫌だけど、なるべく元気で楽しく生きていたい。」
これに、医学の恩恵が応えられるように。
ACPは、時間と人手を要する作業。
① 時間がかかる。
👉 「焦らず、レンガの家を建てるように。」
👉 診療を通じて関係を築きながら、少しずつ組み立てていくもの。
② 多くの人と考える。
👉 「優柔不断な医者だな」と思わないでください。
👉 職種や事業所を超えて、さまざまなスタッフで考えます。
③ まさに、ACPは「堆肥作り」。
👉 さまざまな医療者や家族が関わり、少しずつ意見を積み重ねることで熟成される。
👉 時間をかけてこそ、栄養豊かな「決断」が生まれる。
時間をかけて、みんなで積み重ねるからこそ、価値がある。
意思決定の瞬間に、大きな喜びを。
そして、最終的な意思決定の瞬間には、大きな喜びが伴うはずです。
そんなときは——
毎回、乾杯したい。(私は下戸なので、ノンアルコールで結構です。)
最近の推しは、ノンアルレモン酎ハイ。
だから、私を見かけたら——
💡「ああ、堆肥を作って、ノンアルレモン酎ハイで乾杯する人だな。」
そう思って、応援してください。

よだか診療所 前角 衣美
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